日本酒の「新酒」とは何か? 冬にしか出会えない特別な味わい

「新酒の定義」と「酒造年度(BY)」
日本酒における「新酒」とは、単に「新しい酒」という意味ではありません。専門的には、その年の酒造年度(Brewery Year: BY)に造られ、熟成期間を置かずに初めて市場に出回る酒を指します。
酒造年度の基準とサイクルの理解
▶ 酒造年度の基準
BYは通常7月1日から翌年6月30日までと厳密に定められています。
▶ 新酒の製造と出荷
秋に収穫された新米を使用し、最も寒い時期(寒中)に仕込まれます。そして、概ね10月頃から翌年春にかけて、順次「新酒」として市場に出荷されます。
新酒は、その年の米の出来栄えと、酒蔵の技術がダイレクトに反映されるため、そのシーズンの酒造りの成果を予見させる重要な指標でもあります。
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新酒の代名詞「しぼりたて」と「生酒」の関係

数ある新酒の呼称の中でも、最も人気があり、新酒の特性を鮮烈に体現するのが「しぼりたて」です。
鮮度を際立たせる二つの要素
▶ しぼりたて
醪(もろみ)を搾ってすぐに出荷される製品を指します。熟成期間を置かないため、若々しい香りと力強い味わいが特徴です。
▶ 生酒
新酒の時期には、火入れ(加熱殺菌)を一度も行わない「生酒」の商品が多いことも特徴です。火入れをしないことで、酵素が生きていることによるフレッシュで瑞々しい風味が保たれます。
この「しぼりたて」と「生酒」という二つの要素の連動により、他の酒にはない、瞬間を閉じ込めたような鮮烈な生命力あふれる味わいが生まれます。
新酒だけが持つ「荒々しさ」と「刺激的な口当たり」
新酒の最大の魅力は、熟成という過程を経る前の、若々しさと荒々しさを伴う独特の味わいにあります。
味わいの特徴
▶ 香り
熟成香を一切持たず、新米と酵母の持つポテンシャルがストレートに感じられる華やかでフルーティーな香りが際立ちます。
▶ 味わい
濾過や熟成によって削ぎ落とされるはずの「角」が残っており、力強い酸味や濃密な旨味が複雑に絡み合います。
▶ 微発泡感
生酒の場合、醪の段階で微量に残った炭酸ガスが舌にピリッとした刺激を与えます。この刺激は、新酒ならではのフレッシュさをさらに強調する要素です。この刺激的な口当たりと力強い味わいは、この冬のシーズン、この新酒でしか体験できない特別な価値を提供します。
最高の状態で味わうために
新酒は、そのフレッシュさが命であるため、適切な取り扱いが必須となります。

購入後の管理について
- 低温管理
新酒の品質維持には、5℃以下の冷蔵保存が推奨されます。わずかな温度上昇でも酒質劣化(酒が老ねるなど)の原因となるため、購入時から消費時まで徹底した管理が求められます。
- 光の遮断
紫外線は、酒の風味を一瞬で損なう「日光臭」の原因となります。直射日光や蛍光灯の光が当たらない場所で保存してください。 - 早期の消費
開封後、空気に触れると酸化が急速に進行します。新酒ならではの若々しい香りを楽しむためにも、開封後は極力早く、最適な温度で消費することが推奨されます。
新酒、特に「しぼりたて」は非常にデリケートで「生鮮食品」のような存在です。普通の日本酒と同じ感覚で置いておくと、あっという間にその魅力であるフレッシュさが失われてしまいます。最高の一杯を楽しむためにも、ご家庭では上記三点に気を付けてお楽しみください。
おわりに:新酒を通じて日本酒の奥深さを知る
新酒は、ただの「季節のイベント」ではありません。その年の一番バッターの「新酒」を飲むことは、今年の米の出来栄えや、酒蔵が新しく挑戦した味をいち早く体験することを意味します。
「今年のお酒はどんな味だろう?」と想像しながら飲む新酒は、普段の日本酒とはまた違ったワクワク感を与えてくれるはずです。
美味しい新酒を選ぶときは、難しい理屈よりも、まずは「使われているお米の種類」や「味の好み」など、自分が気になるポイントを一つ見つけるところから始めてみてください。新酒を通して、今まで知らなかった日本酒の奥深さや、造り手のこだわりを肌で感じることができるでしょう。
冬にしか出会えない、生まれたての日本酒。その特別な一杯を、ぜひ楽しんでみてください。

しぼりたて新酒 / ハクレイ酒造株式会社
原酒
しぼったそのまま一滴の水も加えない芳しく濃厚な旨味があります。