ひな祭りに楽しむ3つのお酒の違いとは?―桃花酒・白酒・甘酒―

ひな祭りに飲むお酒といえば白酒や甘酒が有名ですが、古代から受け継がれてきた桃花酒、近年人気のにごり酒など、楽しみ方は様々。このコラムでは、それぞれのお酒がどのような歴史を持ち、どう違うのかを比較表も交えて分かりやすく解説します。製法や味わい、アルコール度数の違いを知ることで、ご家族のスタイルに合ったお酒選びができるようになります。
ひな祭りに楽しむ3つのお酒の違いとは?―桃花酒・白酒・甘酒―

桃花酒・白酒・甘酒-3つのお酒の違い

ひな祭りに飲むお酒といえば、白酒や甘酒を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし「白酒と甘酒は何が違うの?」と違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか

さらに、歴史を遡ると「桃花酒(とうかしゅ)」という日本酒が存在します。この三つは全く異なる飲み物ですが、それぞれがひな祭りの文化を形作ってきました。

今回は、桃花酒・白酒・甘酒の違いを徹底比較します。それぞれの起源、製法、特徴を知れば、今年のひな祭りがもっと楽しくなるはずです。


桃花酒(とうかしゅ)とは?

三つの中で最も歴史が古いお酒で、古代中国の「上巳(じょうし)の節句」で生まれ、奈良時代に日本へ伝わりました。
桃は邪気を祓い、不老長寿をもたらす神聖な樹木とされ、桃の花が流れる川の水「桃花水」を飲むと300歳の長命を得られるという伝説があります。
日本では「桃」の音が「百歳(ももとせ)」に通じることから、さらに縁起の良いものとして受け入れられています。

▶製法と特徴
清酒や日本酒に桃の花や花びらを浮かべるだけ。特別な発酵工程は不要で、ご家庭で簡単に作れます。陰陽思想では奇数が縁起が良いとされているため、花びらを3枚、5枚、7枚と奇数浮かべるのが伝統的なスタイルです。
アルコール度数は15度前後(ベースの日本酒による)。透明なお酒に淡いピンクの花びらが浮かび、見た目も華やか。視覚でも春の訪れを楽しめる、風流なお酒といえます。

▶現代での楽しみ方
桃花酒は家庭で手軽に再現できる、ひな祭りならではのお酒。透明なグラスに注げば、桃の花びらが浮かぶ様子が美しく映えます。ちらし寿司や春野菜の天ぷらなど、ひな祭りの料理と合わせれば、雰囲気がより一層華やぎます
桃の花が手に入らない場合は、桃のリキュールと日本酒をブレンドした「桃の日本酒カクテル」もおすすめです。日本酒7、桃のリキュール3の割合で混ぜれば、フルーティーで飲みやすい春らしいカクテルになります。


白酒(しろざけ)とは?

白酒は江戸時代に誕生し、庶民の間で爆発的に広まったお酒です。江戸時代中期、東京・神田鎌倉河岸の酒屋が造った白酒が大人気となりました。
「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」と謳われるほどで、売り出しの日には夜明け前から大行列ができるほど盛況だったといわれています。その様子は『江戸名所図会』にも描かれ、歌舞伎や浮世絵にも登場するほど。白酒は江戸の春を象徴する文化現象となり、貴族だけのものだった桃の節句が庶民の楽しみへと広がりました。

▶製法と特徴
蒸したもち米に米麹を加え、本格みりんや焼酎の中で約1ヶ月熟成させた後、できた醪(もろみ)を石臼ですりつぶして完成です。この手間のかかる伝統製法は、酒類製造にあたるため、家庭で作ることは法律で禁止されています。
アルコール度数は10度前後。白く濁った見た目で、もち米の粒が感じられる滑らかな口当たり、甘くとろりとした味わいが特徴です。デザート酒のような感覚で楽しめますが、しっかりとアルコールを含むため、お子様はNGです。

▶現代での楽しみ方
今も伝統製法で造られる白酒は、ひな祭りのような特別な日に、江戸の伝統を感じながら楽しむのにぴったりです。甘くとろりとした味わいは、ちらし寿司やはまぐりのお吸い物といった伝統料理とも相性が良く、食後のデザート酒としても楽しめます。


甘酒(あまざけ)とは?

甘酒は白酒の代わりに子どもも楽しめる飲み物として定着しました。
甘酒の歴史は古く、日本書紀には起源とされる「天甜酒(あまのたむざけ)」の記述があります。たった一晩で作れることから「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれ、家庭でも簡単に用意できる手軽さが魅力。白酒はアルコール度数が高く子どもが飲めないため、見た目が似ていて子どもも楽しめる甘酒が、ひな祭りの定番飲料として広まりました。

▶製法と特徴
甘酒には2種類あります。酒粕甘酒は、酒粕を湯で溶かし砂糖で甘みをつけたもので、酒粕の風味が強く、体が温まります。米麹甘酒は、炊いたご飯やおかゆに米麹を混ぜ、60度前後で保温して作ります。米のデンプンから糖分を引き出すため、砂糖なしでも自然な甘みが出るのが特徴です。
米麹甘酒はアルコール分ほぼゼロで、子どもも安心して飲めます(酒粕甘酒は微量のアルコールを含むため注意が必要です)。白く濁った見た目で、自然な甘みとさらっとした口当たりが特徴です。ビタミンB群、アミノ酸、ブドウ糖などを豊富に含み、「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養価が高く、疲労回復や美肌効果が期待できます。

▶現代での楽しみ方
家庭でも簡単に作れる甘酒は、子どもからお年寄りまで全年齢で楽しめます。温めても冷やしても美味しく、季節を問わず楽しめるのも魅力。ひな祭りの席では、お子様には甘酒、大人にはお酒という使い分けをすれば、家族全員がそれぞれのスタイルで楽しめます。


もう一つの選択肢、にごり酒

伝統的な白酒や桃花酒、甘酒に加えて、近年注目されているのが「にごり酒」です。白酒が手に入りにくい場合や、白酒とは違う味わいを楽しみたい方に選ばれています。

にごり酒は、もろみを粗く濾した白く濁った日本酒です。通常の日本酒が透明になるまでしっかり濾すのに対し、にごり酒は米の粒や成分を残すことで、白く濁った見た目になります。この白濁した外観が白酒に似ていることから、ひな祭りのお酒として選ばれるようになりました。

白酒とにごり酒は、見た目こそ似ていますが、全く別のお酒です。白酒がもち米・麹・みりんで造られるのに対し、にごり酒は日本酒の製造工程で粗く濾したもの。白酒の甘くとろりとした味わいに対し、にごり酒は米の旨味とまろやかな甘みが特徴です。アルコール度数はにごり酒のほうがやや高め(15度前後)ですが、どちらも大人向けのお酒です。

▶桃色のにごり酒
特にひな祭りにおすすめなのが、桃色やピンク色をしたにごり酒です。桃色を生み出す特別な酵母(アベニン要求性酵母)や古代米を使うことで生まれる淡いピンク色は、まさに桃の節句にぴったり。春の桜や桃の花を思わせる美しい色合いで、見た目にも華やか。若い世代を中心に人気が高まっています。

▶料理との相性と楽しみ方
にごり酒は、ひな祭りの伝統料理と相性抜群です。ちらし寿司の酢飯とにごり酒のまろやかさがよく合い、はまぐりのお吸い物の繊細な味わいを引き立てます。菱餅やひなあられといった甘いお菓子とも、意外なほどマッチするのが面白いところ。米の旨味を感じられるにごり酒は、米を使った料理全般と相性がいいといえます。
冷やして飲むのが一般的ですが、商品によっては常温や燗酒でも楽しめます。お子様には甘酒、大人にはにごり酒という使い分けをすれば、家族全員がそれぞれのスタイルでひな祭りを楽しめます。

比較表:四つの酒の違いまとめ


ひな祭りをもっと自由に楽しむ

桃花酒、白酒、甘酒、そしてにごり酒――ひな祭りに楽しめるお酒の選択肢は豊富です。
伝統を大切にするなら、江戸時代から続く白酒や、平安貴族が楽しんだ桃花酒を。家族みんなで祝うなら、子どもも安心して飲める甘酒を。白酒が手に入りにくい場合や、日本酒らしい味わいを楽しみたいなら、にごり酒を選ぶのも良いでしょう。

ひな祭りのお酒に「これでなければいけない」という決まりはありません。それぞれの魅力を知り、シーンや好みに合わせて選ぶことで、女の子の成長を祝う特別な日が、もっと楽しく、もっと思い出深いものになるはずです。
今年のひな祭りには、伝統と新しさを織り交ぜながら、春の訪れをお祝いしてみてはいかがでしょうか。